大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)498 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人三島保の上告理由第一点について。

論旨は、原判決が「昭和一九年三月二八日控訴会社庶務課長Dは被控訴人方を訪

れ、被控訴人に対し控訴会社が本件建物を買受けたことを告げ明渡しを求めたとこ

ろ、被控訴人はなるべく早く明渡す旨答えたこと、その後控訴会社は係員をやつて

被控訴人にたびたび明渡しを請求したがその都度被控訴人は転居先なくしばらく待

たれたい旨答え明渡請求に応じなかつたことが認められる」と判示しながら、引続

いて「以上の認定事実によると被控訴人が昭和一九年三月二八日本件賃貸借の解除

に合意したとみるに足りない」と判示しているのは、原判決には法令の解釈適用を

誤つたか、もしくは理由不備の違法があると主張する。しかし、「なるべく早く明

渡す」旨の答えの中には、なるべく早く移転先を探し移転先が見付かり次第賃貸借

を終了させることに異議がないという趣旨を含んでおると解することができるので、

同答えによつて、賃貸借の解約に即時合意したものと、必ず判断しなければならな

いものではない。従つて、原判示にはその意を尽さないものがあるけれども、原判

決において、挙示の証拠を斟酌した上被上告人が昭和一九年三月二八日本件賃貸借

の解約に合意したものとみるに足りないと判示したことは相当であつて、所論法令

の解釈適用の誤り、もしくは理由不備の違法があるとは認められない。論旨は理由

がない。

同第二点について。

原判決は、挙示の証拠によつて、本件係争建物を必要とする程度は上告人より被

上告人において強度であることを認定し、右認定にもとづいて、上告人主張の各解

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約申入れについてはいずれも正当の事由を認めることはできないと判断しているこ

とは原判文上明らかである。そして、原判決の右認定および判断はこれを肯認する

ことができる。所論は、原審において主張判断のない事実にもとづく独自の見解に

立脚する主張であつて、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 高 橋 潔

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

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